当院について

治療の理論

当院では北京堂淺野式による鍼治療を実践しております。北京堂の鍼治療理論は主に『黄帝内経』という古典書籍に基づいています。そこには「通じなければ痛む」とあります。通じない物とは経絡であり、ツボとツボをつないだ経路で、つまりは血管の総称です。血液は私たちの身体の中を循環する液体です。その血液が酸素や栄養を運び、ホルモンや体温を調節し、病原体や異物などから身体を守っています。なので筋肉がかたまり血管を圧迫して血流が悪くなると組織への栄養がなされなくなるために痛みなどの症状が起きると考えます。

北京堂では、神経が圧迫されて痛みが発生するとしています。すべての痛みが神経の圧迫からきているわけではないので、筋肉による神経圧迫から起きている痛みが主な鍼の治療対象としています。この圧迫段階は3つあります。

①初期は筋肉が少し神経を圧迫して、神経がパルスを発生させている状態。これが知覚神経を圧迫していればジリジリと痺れるような感覚や圧迫感が脳に伝えられ、運動神経なら筋肉を少しづつ収縮されて緩まなくし、筋肉付着部に圧痛をもたらす。

②次に筋肉が神経を圧迫し、神経が激しくパルスを発生させている状態。これが知覚神経を圧迫しているなら締め付けられるような痛みとなって脳に伝えられ、運動神経を圧迫しているなら不随意の痙攣となります。

③最終段階が筋肉が神経を強く圧迫し、神経からのパルスを遮断している状態。これが知覚神経を遮断していれば感覚は脳に伝えられないので知覚がなくなり、運動神経を遮断していれば脳からの命令が伝わらないので筋肉が動かせないと考えます。

だから手足が動かないとか感覚のない場合が最も進行しており、治療時間が長期にわたります。

 


治療の特徴

①深針で筋肉に直接アプローチ

凝り固まってしまっている筋肉へしっかり刺します。深層筋である大腰筋やお尻の筋肉(股関節)の小殿筋へは、長い針を使わないと届きません。

②針の本数が多い

患者さんの状態によって20~80本刺します。腰だけ悪い場合は20本くらい、腰と股関節と足が悪い場合は60本と、悪い部分が多いほど本数が増えます。

③得気のある針

固まった筋肉に鍼を入れるので、得気(とっき)という独特な響きがあります。凝っている筋肉をぐーっと指圧をされたときに感じるズーンと響くのような感覚です。

健康な筋肉に針を刺しても、「え、刺したの?」という感じで何も感じません。少し悪い程度の人は「気持ちいい」感覚です。悪い人ほどズシーンの響きが強く感じられます。こうした感覚を伴う得気があれば「悪いところに当たってる」と思ってください。

軽症のうちに治療しておけば、得気も心地よく、早く治ります。重症ですと、針が硬い筋肉に刺さったとき、ゴムでぐるぐる巻きにされたような、激しい鈍痛の伴う得気になります。さらに硬くなり、太い針でも刺さらない筋肉になりますと、針を刺しても筋肉の収縮が起こらず、さらに知覚神経の信号も遮断されていますので、何も感じなくなります。

重症の人は、時間はかかりますが治療を続けると固まった筋肉も緩み、知覚神経の信号も伝達するようになって、そのうちやっと鍼をして痛みを感じるようになります。このとき「逆に痛くなった」と、悪化したと思われる患者さんがいますが、症状があって麻痺した感覚から痛みが現れてきた場合ですので好転しているのです。これを冥眩反応と呼んでいます。

針の得気が、どうして起きるのかですが、もともと針は細いとはいえ、筋肉にとっては侵害刺激なのです。悪くない柔らかな筋肉ならば、針を大した侵害刺激と受け取らないので、あまり収縮しません。しかし硬く収縮した筋肉は、ただでさえ収縮した筋肉によって神経が圧迫され、興奮しやすくなっているところに針が加わると、神経は強い侵害刺激ととらえ、それ以上は針を入れさせないように筋肉を収縮させます。このように針の刺さった筋肉がギュッと収縮することで、知覚神経が圧迫されて「重怠い」針の得気感が発生します。

こうした筋肉の収縮は、一般の悪さの筋肉なら20分ぐらい続き、そのあとは筋肉の収縮と弛緩が繰り返されます。この筋肉の収縮によって筋肉内の静脈に溜まった血液が押し出され、また弛緩によって筋肉内の静脈へ新鮮な血液が入り込むのです。こうして静脈の血液が入れ替わることにより、動脈の血液も鬱血していた筋肉へと入り込むことができるのです。

これを中国医学では「旧血があれば新血が生まれず」といいます。つまり古くなった血が占領していれば、新しい酸素を含んだ血液が入り込めないわけです。体表の古い血ならば、寫血して吸玉することにより取れますが、体の深部にある古い血は、筋肉に収縮と弛緩を繰り返させることによってしか入れ替えることができません。これが得気の正体です。

④置針時間が長い

針が刺さっている間は、筋肉が収縮と弛緩を繰り返して血液循環をよくしています。針を置く時間が長ければ長いほど良いのです。北京堂では通常35分置きます。初めてで慣れていない方や患者さんのその日の体調によって少し短めの置針にすることもありますが、最低でも20分以上置いたほうが良いです。

⑤針治療の後、3日間も治療中

針を抜いた後、針をした部分は重怠くなります。それは、凝っている筋肉に針を刺し、圧迫による痛みを筋肉痛に変えているからです。その違いですが、凝った筋肉は硬いため、血管を締めつけて血流が悪くなり、どんどん悪化します。しかし筋肉痛では筋肉自体が柔らかいので、血管を圧迫することなく血液が流れ、筋肉内に溜まった疲労物質(酸素不足によって生まれた発痛物質)は代謝され、健康な筋肉へと生まれ変わるのです。筋肉痛が治るまでの約3日間は、筋肉の修復期間です。こうした筋肉の修復期間中は治療中ですので、針をした部分の筋肉をなるべく使わないようにしましょう。

 


治療に使う中国針

当院では鍼柄(しんぺい)という持ち手の部分が長く、身体に刺した針の操作がおこないやすい中国針を使用しております。4㎝~15㎝の長さを用意しており筋肉の深さに合わせた針を使います。コリのひどい箇所には特殊針を使用して筋肉の拘縮改善をはかります。