腰痛
腰痛の8割以上が筋肉の緊張によるものに分類されます。筋肉の過緊張が原因で神経や血管を圧迫して痛みが起きているものや筋繊維が切れたり傷ついて内出血、炎症によって痛みが出ているものです。これらはレントゲンなどの検査しても異常は見つかりません。
筋肉の緊張以外の腰痛は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、圧迫骨折、尿管結石などです。これらは医療機関での治療が必要になります。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は診断が出ていても実際は筋肉の拘縮によって椎間が狭くなり症状が出ていることが多いです!
軽い腰痛なら3~5回くらいで良くなります。ぎっくり腰を繰り返しているような方、長期間腰痛を患っている重症の方の場合は10回以上完治までかかることがあります。
腰痛の主な原因となる筋肉は脊柱起立筋、大腰筋、腰方形筋、腸骨筋、殿筋の大きく5種類に分けられます。これらの筋肉が固まることによりさまざまな症状が現れてきます。
〇脊柱起立筋
脊柱起立筋は背中が曲がらないように背骨を支えている筋肉です。背筋を伸ばすとき使われている筋肉になります。
前屈みになると痛い。
背骨の両側を押すと痛い。
などは脊柱起立筋が原因であることが多いです。
脊柱起立筋は図のように首から骨盤までをつなげている長い筋肉になりますので痛みのでている場所によって鍼を刺す場所が変わってきます。
腰の上部の時は肩甲骨の下端の高さから腰まで、下部の時は腰から骨盤までの範囲で鍼を刺していきます。
脊柱起立筋への刺鍼は腰の背骨の外側2cm位に並べて鍼を刺していきます。重症の方はこの鍼の並びを増やして2列、3列にして鍼を刺していきます。
〇大腰筋
大腰筋は体幹と脚をつなげている筋肉であり、お辞儀をしたり膝を持ち上げる動作で働いている筋肉です。腰の背骨にくっついている筋肉なので姿勢にも大きく関係しています。
腰がくの字に曲がって伸ばせない、伸ばそうとすると痛い。
腰を後ろへ反らすと痛い。
咳やくしゃみで響いて痛い。
左右はなく真ん中が痛い。
などは大腰筋が原因の腰痛になります。
腰に不意に負荷がかかりこの大腰筋が激しく痙攣している状態がぎっくり腰です。
大腰筋への刺鍼は4番目の腰の背骨の外側4~5cmに鍼を刺します。大腰筋は図のようにハの字に開くようついていますので鍼もハの字になるように並べて刺していきます。深部にある筋肉なので使用する鍼も体格に合わせて9cm前後の鍼を使用します。
〇腰方形筋
腰方形筋は第十二肋骨から腸骨稜という骨盤の上端に付着している筋肉であり、身体を横に曲げておこなうスイング動作や片方の手で荷物を持った時などに使われる筋肉です。
腰をひねると痛い。
腰の外側が痛い。
身体を側屈すると伸ばされている方が痛い。
腰の後ろ側ではなく、脇腹から脊椎に向かって指圧すると痛い。
などは腰方形筋が固まり腰痛をひきおこしています。
腰方形筋への刺鍼は脊柱起立筋の盛り上がりの境目から背骨へ向かって鍼を刺します。ベッドとほぼ水平に刺していきますので、重力に負けて鍼先が下方へ向かわないように太めの鍼で直進性を保ちながら刺して鍼先を背骨に当てて止めます。
〇腸骨筋
腸骨筋は大腰筋とセットで腸腰筋と呼ばれていて骨盤の内側に付着している筋肉で大腰筋と同じ働きをしています。痛みのあらわれ方も大腰筋と同じ動きで出ますが腸骨筋は骨盤の内側にあるのでお尻の痛みとして痛みを訴えるケースが多いです。大腰筋への刺鍼でなかなか痛みがとれない場合、お尻へ鍼を刺しても変化がない場合などは腸骨筋へ刺鍼をおこないます。
腸骨筋への刺鍼は仰向けで膝の下にクッション等を入れて膝を曲げて、腹筋と腸骨筋を緩ませた状態で鍼を刺します。上前腸骨棘という骨のでっぱりから骨盤の内側に鍼先を添わせるように鍼を刺していきます。骨盤は形状に男女差があり女性は男性よりも骨盤腔が大きいので体格に合わせた、長さ12~15㎝の鍼を使用します。
〇中殿筋
お尻の筋肉の中では中殿筋が腰痛の原因になっていることが多いです。中殿筋は骨盤と大腿骨をつないでる筋肉で主な動作は足を外側へ開く運動をおこないます。日常生活では歩行時などに片足が浮いた状態のとき骨盤が落ちないように支えてくれています。
前屈みになると骨盤の上端付近に痛みが出ます。
中殿筋への刺鍼はその奥にある小殿筋も含めて鍼を刺していきます。お尻の筋肉は分厚いので7.5cm~10cmの鍼を使用し骨盤に鍼先をあてて止めます。大腿骨の大転子を中心に扇状にして鍼を並べて刺していきます。